ラストガーディアンのブリッジに突然、けたたましい警告音が鳴り響いた。

「時空のゆがみを感知!!トリニティのロボット、出現します!!」
「な!?何故今まで気付かなかったんだ!?」

オペレーターであるメイアの報告を受けてラストガーディアン副長の神楽が上ずった声を出す。
普段からトリニティの出現には目を光らせているだけに驚きを隠せないのは神楽だけではない。

「詳しい情報、分析お願い!」
「了解!」

館長である律子の指示を受け、シャルロットの指がコンソールの上に走る。

「エリクさん!シャルロットの情報分析、サポートお願いします!」
「了解♪」

エリクの指は神業じみたスピードでコンソールの上を滑る。
シャルロットの眼前のモニターには、エリクから送られてくる膨大な情報が表示されていく。
シャルロットは多少の驚きを感じつつも、その情報を正確に分析していく。

「詳細なトリニティ出現ポイント判明!!」

ドガアアアアッ

「きゃああああ!!」
「うわああああ!!」

ラストガーディアンの船体が衝撃で大きく揺れる。

「ここ、というわけね」
「は・・・はい!ここを基点として500キロを境に計5か所に出現!!各地で破壊活動を続けています」
「・・・ッ!」

シャルロットの報告を受け、律子がその美しい顔を歪める。
まったく、忌々しいほどに次から次に新しい手を打ってきてくれる。
ブリッジから肉眼で見えるその機影は細身とかなりの大型の2つだった。




「チーム分け?」
「なんでも、その5か所に2体ずつ現れたんだそうだ」

咲也の質問に志狼は腰のナイトブレードを引き抜きつつ答える。

「全部で10体・・・ブロンもなしでか!?」
「それだけ自信がおありなんだろうよ、トリニティさんは。ったく・・・まさかホントに今日出るとは思わなかったぜ」

口を尖らせてこめかみに汗をかく志狼。

「?なにか言ったか?」
「なんでもねえよ!」

咲也の問いに、大声で答える志狼。
ちなみに彼はラストガーディアンの守りを固めろと指示されていた。

ドゴオオオオオオンッ!!!

「あんまのんびりもしてられねえなこりゃ・・・召喚ッ!!剣士ヴォルネスッ!!」
「おおおおおおおおお!!」

先ほどからやむ気配が無い衝撃を感じて、志狼相棒であるヴォルネスを召喚する。
ラストガーディアンの甲板から出撃した志狼は、今回作戦行動をともにする勇者の到着を待たずに、
ラストガーディアンに攻撃を仕掛けている敵に向かって突進する。

「ちょーしにのってんじゃねえッ!!」
「ナイトブレードッ!!」

ナイトブレードを構えると振りかぶって体格の大きい方のロボットに斬りかかる。
が。

ガキィッ!!

「な、なにいッ!?」

いつの間にかヴォルネスと体格の大きいロボットの間に、
細身のロボットがその体を割り込ませナイトブレードを完全にブロックしていた。

「いひ、いひ、いひひひひひひ!!無駄無駄ア!!きひひひひひ!!」
「次はこちらの番だ。我がランスによる一撃を受けてみよ」

そして体格の大きいロボットはヴォルネスの側面から強烈なランスによる一撃を加える。
なんとか、ナイトブレードでうける事に成功するヴォルネス。
だが。

ガシャアァッ!!

「うああああ!?」
「ぬ・・・ううう!!」

体格差もあいまってか、簡単に吹き飛ばされてしまった。
体勢を立て直せそうにない。

ガシッ

「全く・・・仕掛けるならもう少し待ってても良かったんじゃないか?」
「おせーぞ!ったく」

ヴォルネスが地面に叩きつれることは無かった。
吹き飛ばされたその体をクロノカイザーがしっかりと受け止めていたからだ。
トライガーディオン、ビートソーディオン、ビートザンパーが次々と降下してくる。

「すまない。支度に手間取ってしまった」
「したくも何も、剣抜いて大きくなるだけじゃねえか」

ズンッ

ラストガーディアンからサイズをそのまま大きくした鋼鉄の騎士、ロードが降下してくる。

「それがそうでもねえんでさ、旦那」
「ドレスとか着こんでみたりしてな」
「二人とも!油断は禁物です!」

ドレスとは合体のことだろう。
バラストネイサーからテイト・アルバートとオフェト、ディファーの声がする。

「ボク達もいるよ!」
「謙治。分析の方は?」
「はい。今分かる事は・・・そうですね。御剣さんの仕掛けた攻撃によって大きい方がオフェンス、細身の方がディフェンスと完全に分担していることがわかりました」
「ふん、確かに間違いなさそうだな、それは」

ズンズンズンッ

着地音は三つ。フラッシュブレイカー、ウルフブレイカー、サンダーブレイカー。
そして飛行型ブレイカーマシン、フェニックスブレイカーだ。

「てか、なんでこのメンバーなんだ?」

ヴォルライガーが接近戦に特化した機体だからか、チームを組む際には大抵射撃が得意な勇者−例えば、聖霊など−と組まされる事が多い志狼だったが、
今回のクロノカイザーのような中間距離が得意な者や、ロードと言った接近戦が得意な勇者とチームを組まされるのは珍しい事だった。

「そんなことは後回しだ。くるぞ志狼!!」
「わーってるよヴォルネス!!」

ヴォルネスの叱責にハッとなる志狼。改めて敵機の容貌を凝視する。
細身の方は全身を白のカラーリングで統一していて武器はこれといって見当たらない。
サイズは25メートル級、といったところか。

「キヒヒヒヒ・・・どんなに来ようが無駄無駄ア!!このシルトを相手にしてぇ!!」

そしてなかなかサイコなAIをつんでいるらしい。
そして大き目のロボットの方は、西洋のお城の中にでも置いてありそうな無骨な鎧を想像させる重厚なボディ。
かなりの巨体で60メートルはありそうだ。
カラーリングはこちらも白。
そしてその手には西洋の騎士が用いていたランスが握られている。

「私の名はランツェ。お手合わせ願おう」
「うお!?」

ランツェのランスによる超突進攻撃を回避するヴォルネス。
無骨な武人といった性格のようだが、あくまで彼もトリニティの刺客なのだ。
油断すれば、その瞬間命を落してしまうだろう。
志狼は気を引き締め、ナイトブレードを構えた。




「どういうつもりかしら・・・志狼君と同じチームにしてくれ、だなんて」
「見てみたいものがある、って言ってましたね。あの三人」

ラストガーディアンブリッジ。
律子と神楽はチーム申請してきた三人の勇者の顔を思い出しながら言った。
三人の勇者とは草薙咲也、大神隼人、ロードの三人である。
彼らの出撃が遅れたのは律子にチーム編成願いを出していた為だった。
その理由については謎である。

「さて・・・むしろあの三人に志狼が教わることが多いと思うのだが」

剣十郎は腕組みをしながら、一人呟いた。




「あのシルトというロボットの防御力はかなりのものです。
 ランツェと名乗ったロボットを攻撃しようとすれば、シルトが間に入ってこちらの攻撃を無力化してしまいます。
 ランツェを仕留めるとなると、やはりあの分厚い防御を先に突破するしか方法はありません」
「「「「「「了解ッッ!!!!」」」」」」
「まずは俺からだッ!!」
「仕掛ける」
「いくよっ!!」
「おおおお!!」

ヴォルネスはナイトブレードを、ウルフブレイカーは拳を、フラッシュブレイカーは棍を、ロードがローディアンソードをそれぞれ構え、シルトに飛び掛る。

「キヒヒヒヒ!!無駄無駄ア!!」

だがシルトはバックパックから10本の触手を生やしたかと思うと、
ヴォルネスたちに向かってソレを伸ばし始めた。
その動きはかなり俊敏で、気を抜けばあっという間に跳ね飛ばされるだろう。

「にゃろう・・・自分の防御も完璧ですってか!?」

攻撃は最大の防御、とでも言っているのだろうか。
巧みなステップで、それらをかわす4体。
一気にシルトの懐に飛び込む。

「なめんな!!御剣流剣術『電光石火』ァッ!!」
「ウルフクローッ!!」
「やああああ!!」
「ディメンシアエッジッ!!」

だが。

ガガガガキィッ!!

「「「「つ、通じない!!?」」」」

彼等の得意武器は全てはじかれてしまった。

「通じないぃ!!・・・なんつってなあ!!アハハハハハア!!」

驚愕する面々に対して、触手による攻撃が繰り出される。

「あ、危ないッ隼人くん!!」

ドギャアッ!!

フラッシュブレイカーは触手に狙われていたウルフブレイカーを突き飛ばすと、その餌食となってしまった。

「た、橘ッ!!!!」

フラッシュブレイカーの左足と右肩を、完全に貫かれている。
あれではパイロットも無事ではすまないだろう。

「美咲ッ!!この・・・!バースト・トルネード・・・!!」
「神楽崎さんッ!!後ろです!!」

ドギャアッ!!

「きゃあああ!!」
「神楽崎さんッ!!」

今度は必殺技を放とうとして、一瞬動きを止めてしまったフェニックスブレイカーは、
翼をランツェのランスに貫かれて墜落しまう。
ランツェのランスによる一撃の一部始終を見て、志狼は戦慄する。

「あいつ・・・でかくて攻撃力が並外れて強いだけじゃない!!滅茶苦茶はええ!!」
「離脱しろッ!!今度は俺たちが仕掛けるッ!!」
「わかったッ!!」

クロノカイザーの撤退要請を聞き、ウルフブレイカーはフラッシュブレイカーを、ロードはフェニックスブレイカーを抱えるとすぐさま離脱する。
ヴォルネスは後退する二体に向かって伸びる触手をはじく。

「志狼・・・!」
「ああ、わかってるッ・・・!」

ヴォルネスの声に、志狼は舌打ちをしたくなるような気分で返す。

(この触手も並みの硬さじゃない・・・ナイトブレードじゃ斬れねえ!!)

そしてヴォルネスたちが完全に離脱するとクロノカイザー、トライガーディオン、
ビートソーディオン、ビートザンパー、バラストネイサー、サンダーブレイカーが一斉にシルトに攻撃を仕掛ける。

「カイザー!!キャノンッ!!」
「シューティングスターッ!!」
「一気に決めてやるぜッ!!!!スピリットキャノンッ!!!!」
「ライトニングスマッシュバスターッ!!!!」
「ライトニングバスターブレイクッ!!」

各々が最強クラスの必殺武器を放つ。
が。

「む・・・むっふっふふふふふ無駄無駄無駄ア!!!」

バシュ・・・ゥン・・・

先ほど攻撃を仕掛けたのは合体前の機体がほとんどだった
だが、今回の合体後の彼らの攻撃でさえも、完全にはじかれてしまった。

「ば・・・」
「馬鹿なッ・・・!?」

驚愕する一同。

ヒュ・・・

そんな中を一陣の風が駆け抜ける。

「戦闘中に気を抜くと命取りになる」
「!!」

ズガアアッ!!!!

「「「きゃああああああ!?」」」
「う・・・おおおお!?」
「雪乃!月乃!!花乃!!!」

一瞬でトライガーディオンの懐に飛び込むと、そのランスで四肢を貫くランツェ。

「くッ!!サンダー・・・キャノンッ!!」

ドシュンッ!!

ランツェに向かってサンダーキャノンを放つサンダーブレイカー。

「無っふ駄無駄って言ってるでしょオ!!ブハハハハ!!」

バッシュン

だがまたもシルトがランツェとの間に入り込んで、完全にブロックされてしまう。

「な・・・なんて装甲なんだ!!」
「んっふっふっふ・・・ば〜い!!」

ズガガガガガガガッ!!!

「うわああああ!!」

シルトの触手によってサンダーブレイカーは頭部、右手、左足を貫かれてしまう。

「謙治!!」
「だ・・・大丈夫です。もう、動けそうにありませんが・・・」

墜落時にぶつけたのか、肩を押さえながら悲鳴をあげる麗華に、弱々しく返す謙治。
ランツェの次なるの標的は雷の闘士。
超突進からランスを突き出すランツェ。

「そう簡単にはいかせねえってのッ!!」

ガッキイッ!!

「!ほう・・・」

ランツェの攻撃を紙一重でかわすとバラストネイサーはランスをガッチリ脇に抱え込む。
だがランツェは動じない。

「フ・・・どこまで耐えられるかな?」
「何!?う、うおおおお!?」

ランツェは背面についているブースターをふかすとバラストネイサーを引きずりながら突進し始める。

「クソッ!!このままひきずってボロボロにするつもりか!?耐え切れバラストネイサー!!」

バシュウッ!!

バラストネイサーも背面のスラスターを全開にする。
が。

「く、くッ・・・おおおお!?」
「た、耐え切れないだと!?」

怪力闘士であるバラストネイサーがスラスターを全開にしているにも関わらず、その勢いが止まる気配が無い。

「なら俺たちが支えてやるぜッ!!」

ガキィッ!!

バラストネイサーの両肩を後から支えつつ、ビートソーディオンが地面に足をめり込ませて前進しようと試みる。
怪力自慢の勇者が二人掛かりだ。かなりの善戦が期待できた。
だが。

「とても話にならん」

回転をかけ、バラストネイサーの脇からいとも簡単にランスを引き抜くランツェ。

「な・・・」
「散れ」

ズギャアアアアアッ!!!!

そのままバラストネイサーとビートソーディオンの腹を串刺しにする。
ビートザンパーはスピリットキャノンから変形が強制的に解け、地面に投げ出される。

「バラストネイサー――――――!!」
「ビートソーディオンッッ!貴様らあッ!」
「怒るなって、そんなにさああああっはっはっははっは!!!」

ロードとクロノカイザーは激昂するがシルトの人を小ばかにした態度は変わらない。

ズシャ

バラストネイサーとビートソーディオンからランスを引き抜くランツェ。

「ぐあ・・・ああ」
「く・・・た、立てねえッ・・・!!畜生・・・!!」

なんとか無事らしい。
だが戦闘続行はとても無理だ。

「ヴォルネスッ!!」

このままでは勝てない。
自分も全力を出さなければ全滅すると悟った志狼は、ヴォルネスにサポートメカ召喚を促す。

「了解!!ライガーーーードッ!!!」

ヴォルネスが叫ぶと当たり一面に雷雲が立ち込め、額のクリスタルに集まっていた光を空に向かって放つ。
すると雷雲から一条の雷が地面に落ちるとその雷はライオンの形を形成していく。

ガオオオオオオオオ!!!

そのライオン型のメカ・・・ライガードは雄たけびを上げる。

「ヴォルネス!!ライガード!!『雷獣合体』だ!!!」
「了解!!」
「ガオオオオオオン!!」

ライガードが地を駆ける。

ダンッ!!

そして合体シークエンスに入ろうとしたとき、

「させっさせっさせるかってんだはははははははは!!!」

ズギャアァッ!!!

なんとシルトはその無数の触手をライガードに向かって突き立てる。
ライガードは無残にもその体中を触手に貫かれてしまう。

「ガアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「ら、ライガード――――――ッ!!!」




「一気に・・・6体もの勇者を・・・!?」

スクリーンに映し出されている戦闘映像を見て呆然と呟く律子。

「おまけに志狼君は合体不可・・・」

その傍らで眼鏡を中指で押し上げつつ冷や汗を流しているエリク。
その表情にいつもの笑みは無い。

「いやいやいや、困りましたねえ・・・」

お決まりの台詞を吐きつつも、小鳥遊は今回ばかりは余裕は無い。
完全に劣勢だった。
各地区に散った勇者たちも、かなりの苦戦を強いられていると通信が入った。
だがこのチームほど苦戦してはいないだろう。
ここは勇者たちの頭数が他のチームに比べてはるかに少ない。
そのうえラストガーディアン付近に派遣された事から、5箇所に現れたトリニティロボットの中でも最高の性能を誇っている可能性がある。

「軽率・・・だったかしら」

己の迂闊さを呪う律子。
だが、あまりに真剣な目で訴えてきたあの3人を邪険にする事は、彼女にはできなかった。
しかし、これでは下手をすると…。

「残っている者は・・・ヴォルネス、ロード、ウルフブレイカー、そしてクロノカイザーのみ、か」

葛葉は腕組みをして唸る。
合体を封じられた勇者が大半で、現在まともに立っている勇者で合体を終えているのはクロノカイザーのみだ。
剣十郎は静かに、ヴォルネスを見やる。
そんな中、ブリッジで待機していた治癒の少女はある決意をした。




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